未来の森を育てる仲間をつくろう|おやまグリーンアクションプロジェクト森づくり団体設立編

おやまグリーンアクションプロジェクトでは、未来の森を育てる仲間をつくるための「森づくり団体設立編」を2026年3月7日に小山市役所で開催しました。
2025年11月から2026年2月までの秋冬にかけて開催された「準備と実践で学ぶ!森づくり編」全4回を踏まえ、「森づくり団体をつくるにはどうしたらいいか」をテーマにしたイベントです。

今回のゴール

  • 森づくり団体について理解を深めること
  • 自身の問題意識を整理すること
  • やりたい活動、つくりたい団体を言語化すること

これらのゴールに向けて、専門家のキートークとQ&A、仲間と一緒に未来のチーム像をつくるワークショップが行われました。

今回参加してくださった7名全員が、「森づくり編」への参加経験がある方々でした。各人の意欲が高く、一緒に作業したことがあるメンバーなのでコミュニケーションもばっちり。ワークショップでは活発に意見が飛び交っていました。
当日の様子をお伝えします。

森づくり団体の「最初の一歩」を踏み出すには?専門家の話から学ぶ

まずは、森づくり団体について理解を深めるため、NPO法人トチギ環境未来基地 理事長の塚本竜也さんにお話を伺いました。

NPO法人トチギ環境未来基地(理事長) 塚本竜也さん

大学で森林資源を専攻し、卒業後シアトルの環境NPOで半年間の研修に参加。 帰国後、東京のNPOで国際ボランティア活動の企画運営に従事したのち、2009年トチギ環境未来基地を設立。
「環境」と「若者」を中心テーマに、様々な活動を展開。若者の力による豊かな里山づくり・地域づくりと、社会貢献活動を通じた次世代の育成を使命の両輪とし、2010 年より活動開始。ワークキャンプを柱とする活動展開により、若者、親子、企業、外国人ボランティアなど様々な参加者とともに活動を推進。
コロナ前は年間約2,000人の参加を得て約15haの里山を整備。持続的な里山の利活用も多様なパートナーと共に進めている。
第14回オーライ!日本大賞グランプリ内閣総理大臣賞、第8回毎日地球未来賞奨励賞受賞など。

1. 日本の森林の現状とこれから

日本の国土面積のうち、約66%を占めているのが森林です。ただし、日本の森林の歴史は荒廃と再生の繰り返しでもありました。
現在では管理できない森林が増え、昔は生活に密接していた「里山」も、管理されずに荒れている場所が増えています。
林業従事者が大きく減少しているだけでなく、過疎化や高齢化によって地域での担い手も減り、里山の荒廃につながっているのが現状です。

これからの時代、日本の森林をよくしていくために、森づくり団体には何ができるのでしょうか。
塚本さんは、「森林の役目は木材生産だけではありません。環境、エネルギー、ヘルスケア、暮らしや社会の課題などに対して森林が価値を提供できる時代になったので、森づくり団体にとってのチャンスは広がっています」と語ります。

2. 森づくり団体の活動事例

森づくり活動で大切な2つのポイントについて、塚本さんに教えていただきました。

  1. その土地に固有の「小さな物語」を活動の求心力に変えていく
  2. 「里山の整備・活用」を、多様なボランティアや人々とともに進める

一例として紹介してもらったのが、市貝町での、廃校裏の森を整備する活動です。
その森は小学校の裏山にあり、子どもたちの遊び場となっていたため、地域の人々が協力して管理していました。しかし、小学校が廃校になったことで手入れされなくなってしまったのです。「地域のシンボルである学校林をやっぱり大切にしたい」と何名かが立ち上がったものの、自分たちだけで整備するのは難しいと、トチギ環境未来基地に相談がありました。
トチギ環境未来基地が声をかけてボランティアの人々が集まってくると、地域の人々だけでは難しかった作業もできるようになります。さらに、その様子を見て、それまで参加していなかった地域の人々が新たに仲間に加わってくれました。

今では、廃校で学童保育が始まり、廃校裏の森は「学童保育の森」として再び子どもたちが集まってくる場所になりました。
森づくりの活動に人を集めるために大切なのは、その場所に対する思いを持っている人が「この森でこんなことがあったんだよ」という小さな物語を伝えていくことなのだそうです。

また、森づくり団体そのものの会員数が多くなくても、プログラムを整えていけば外部から多様なボランティアや人々を呼び込んで、その力を活用することができます。だからこそ、森づくり団体が存在していることが重要なのだと、塚本さんは強調しました。

3. 森づくり団体をはじめる、最初の一歩

では、森づくり団体をつくるにあたって、何から始めればいいのでしょうか。
それを考えるために、塚本さんから参加者にちょっとしたクイズが出題されました。
「森を整備するとき、森林組合などの業者さんに頼むのと森づくり団体がやるのは、何がちがうでしょうか?」というものです。

参加者はグループに分かれてディスカッションを行い、「費用を抑えられる」、「参加者同士の交流が生まれる」、「その地域で長く活動を続けることによって知見を共有できる」といった意見が出されました。それこそが、「森づくりにおける市民活動の強みやメリット」だと塚本さんは言います。

森づくりにおける市民活動の強みやメリットを意識した上で、最初の一歩として取り組むべきなのは「5W2Hの具現化」です。
「どこで」「なぜ」「何を」「誰が」「いつ・どのように」「お金を考える」というそれぞれのポイントについて、事例紹介も交えながら詳しく説明していただきました。
そして、一番大事なこととして「安全管理」についても教わりました。
塚本さんの16年間の森づくり経験に基づいたレクチャーに、参加者は感銘を受けた様子で聞き入っていました。

森づくり団体の活動ノウハウを、さらに深く知る

キートークの後は、塚本さんへのQ&Aのコーナーでした。一部を抜粋してご紹介します。

質問:都市区域にある森で活動するには、どのように所有者と交渉すればいいでしょうか。誰が所有しているのか、どうやったら知ることができますか。

塚本さん
これまで、全く面識のない所有者のところに突撃訪問して活動の許可をもらったことはありません。所有者と知り合いの人がいるなら同行してもらうなど、誰かに介在してもらうことが大切です。
所有者について知りたいのなら、市役所で森林簿(森林の所在地や所有者の情報を管理している台帳)を見せてもらう方法もあります。

質問:トチギ環境未来基地さんは外資系の企業や都内の大学ともつながりがあるとのことですが、何か働きかけをしているのですか?

塚本さん
初期の頃はこちらから働きかけをしていましたが、現在は向こうから問い合わせが来ることが多いです。
大学ではフィールドスタディ(教室外でのフィールドワークによる調査研究やプレゼンテーションなど)が行われるようになり、教育プログラムを引き受けてくれる団体を探しています。普段からきちんと活動をして、それを発信している森づくり団体なら、そうした大学とのつながりが生まれる可能性は十分にあると思います。

自分の思いを具現化し、仲間から助言をもらって実現へと進む

最後はいよいよ、森づくり団体をつくるためのワークショップです。
まず、参加者は自分がつくりたいと考えている団体の「5W2H」をワークシートに書き込みます。
それから2グループに分かれ、ワークシートを元に自分のアイデアを発表し、課題や手伝って欲しいことなどについて相談。実現するための方法をみんなで考えます。

参加者は真剣な表情でワークシートに取り組んでいました。
グループ内での発表の時間には、1人1人のアイデアに大きく頷いたり、ときには笑いが巻き起こったりするシーンも。楽しく積極的に、それぞれが思い描く森づくり団体の実現に向かっていこうとしている様子でした。

最終発表の時間には、グループごとに1つのアイデアを発表しました。

1つ目のグループ
近所の小さな森にゴミの不法投棄が多いし、草が生えていて景観がよくないので改善したい。
草刈りや間伐をするとともに、刈った草や落ち葉でコンポストをつくるといった活用方法も試してみたい。また、子どもの遊び場としても活用したい。
活動の開始時期としては2年後を目指している。それまでに所有者に許可をもらったり、どうやって活動資金を得るか考えたり、メンバー集めをしていく。

2つ目のグループ
森づくり編で行ったことのある「憩いの森 鉢形」を整備する団体という前提で考えた。
里山整備をしたい人は定年退職した年代の方が多いが、中高生や社会人などの若い世代にも関わってほしい。
さらに、里山を舞台にしたニュースポーツを行っている団体と協力できたらおもしろいのではないか。そうした団体が使う道具の材料として、森でとれた木材などを提供し、連携してイベントを開催していきたい。
継続的に活動するためには助成金をもらうことも視野に入れて、そのための準備を進めていく。

塚本さんからは、「何か1つでも『こうしたプログラムを提供できます』と言えるものがあれば、継続的に活動資金を得ていくことに結びつきます。ぜひ、みなさんのアイデア実現に向けて進んでいってください」とコメントをいただきました。

参加者へのアンケートでは、「内容が充実していて学びの多い時間を過ごさせていただきました」や、「他の団体の活動にも参加して、知識を深めていきたいです」といった感想が集まりました。
グリーンアクションプロジェクトが、未来の森づくり団体設立に向けての一助となったのなら幸いです。